
Googleは2025年4月、次世代のサイバーセキュリティAIモデル「Sec-Gemini v1(セック・ジェミニ・ブイワン)」を発表しました。このモデルは、大規模言語モデル(LLM)「Gemini」と、Googleが保有する膨大な脅威インテリジェンスを融合し、セキュリティ分析の生産性と正確性を飛躍的に高めることを目的としています。
本記事では、Sec-Gemini v1の特徴や具体的な活用例、優れた性能が示された評価結果を紹介します。
Sec-Gemini v1とは?GoogleのサイバーセキュリティLLM

Sec-Gemini v1は、Googleが新たに開発したサイバーセキュリティ特化型のAIモデルです。ベースとなっているのは、Googleの最先端大規模言語モデル「Gemini」。そこに、以下のようなリアルタイム脅威データやツールが統合されています。
この組み合わせにより、Sec-Gemini v1はセキュリティ業務における以下のようなタスクを自動化・高度化できます。
活用シーン:Sec-Gemini v1が活躍する3つの場面
Sec-Gemini v1は、以下のような業務に特に強みを発揮します。
1. インシデントの根本原因分析(Root Cause Analysis)
セキュリティインシデントが発生した際、Sec-Gemini v1はログデータやアラートをもとに原因を素早く特定。どの脆弱性が悪用され、どの経路で侵入されたのかを明らかにします。
2. 脅威アクターの特定と関連脆弱性の把握
例えば、中国のAPT(高度持続的脅威)グループ「Salt Typhoon」に関する分析を求めた場合、Sec-Gemini v1はその脅威グループの行動パターン、関連するCVE、過去の攻撃事例を横断的に提示します。
3. 脆弱性評価とCWE分類
脆弱性がどのようなリスクを持ち、どの分類(CWE)に該当するのかを自動で判別。脆弱性管理やパッチ優先順位付けの支援にも役立ちます。
高い精度を証明:2つのベンチマークで優秀な成績
Sec-Gemini v1は以下のセキュリティベンチマークにおいて、他のLLMを大きく上回る結果を示しています。


この高いパフォーマンスは、単なる汎用AIではなく、専門性の高いセキュリティAIモデルとしての完成度を裏付けています。
Googleの狙いとSec-Gemini v1の今後
GoogleはSec-Gemini v1を、特定の組織・専門家に研究目的で提供し始めています。今後はWorkspaceやChronicleといったGoogle製品への統合も進み、企業のセキュリティ業務全体を支えるインテリジェンス基盤として発展していくことが期待されています。
また、AIによる脅威分析やレポート作成が自動化されることで、セキュリティアナリストの作業負荷軽減にもつながるでしょう。
※ 2025年4月9日時点で選ばれた組織・機関・専門家・NGOを対象に、研究用途に限り無料提供されています。興味のある方は、こちらから申請してみてください。
まとめ:Sec-Gemini v1はセキュリティ業務の未来を変えるか?
Sec-Gemini v1は、脅威分析や脆弱性評価といった複雑なセキュリティ業務を、AIの力でサポート・強化する新たな試みです。Googleが保有する豊富なデータソースとの融合により、従来のツールでは実現できなかったスピードと正確性を実現します。
今後、企業のセキュリティ対策において、このようなAIモデルが標準になる日は近いかもしれません。
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