
近年、証券口座の乗っ取り被害が日本国内で急増しています。ネット証券の普及やNISA拡充による個人投資家の増加に伴い、攻撃者たちが投資家をターゲットにするケースが目立ってきました。この記事では、最新の被害事例から犯行手口、防止策までをわかりやすく紹介します。
証券口座の乗っ取り被害とは?最近の状況
証券口座の乗っ取りとは、攻撃者が不正にログインし、口座内の株式や資金を勝手に操作する被害のことを指します。2024年末以降、楽天証券、SBI証券、野村證券、マネックス証券、SMBC日興証券、松井証券など大手ネット証券で相次いで被害が発覚しました。
攻撃者は、被害者の口座内の株式を無断で売却。その資金で流動性の低い中国株などを大量購入し、株価をつり上げる「株価操縦型」の手口が多く報告されています。被害者本人が気づいたときには、資産が大きく変動してしまっているケースもあり、被害の深刻さが浮き彫りになっています。
▼ 先日報告された楽天証券の被害について

統計データから見る被害状況について
金融庁がまとめた2025年2月~4月中旬までのデータでは、被害の深刻さが浮き彫りになりました。
時期(2025年) | 2月 | 3月 | 4月上旬(16日まで) | 合計(2~4月) |
---|---|---|---|---|
対象証券会社数 | 2社 | 4社 | 6社 | – |
不正アクセス件数 | 43件 | 1,422件 | 1,847件 | 3,312件 |
不正取引件数 | 33件 | 685件 | 736件 | 1,454件 |
売却金額 | 約1億円 | 約131億円 | 約374億円 | 約506億円 |
買付金額 | 約0.3億円 | 約128億円 | 約320億円 | 約448億円 |
特に3月以降、被害件数は急増。2月の43件から、3月には1,422件、4月16日には1,847件へと膨れ上がっています。被害は、楽天証券、SBI証券、野村證券、SMBC日興証券、松井証券など複数のネット証券に拡大しており、金融庁も「どの証券会社でも被害が起こり得る」と注意を呼びかけています。
また、現時点では、被害者への補償について各社が検討中ですが、金融商品取引法上、必ずしも補償義務が生じるとは限らないため、十分な注意が必要です
政府や金融機関が進める対策
政府や証券業界も、急増する被害に対して様々な対策を進めています。急増する証券口座乗っ取り被害に対して、政府や証券業界でもさまざまな対策が進められています。
金融庁による対応
金融庁は、被害状況を定期的に公表し、広く投資家に向けた注意喚起を実施しています。また、証券会社に対してもセキュリティ対策の強化を要請し、不正アクセスへの備えを求めています。
▼ 金融庁からの注意喚起

日本証券業協会(JSDA)の取り組み
日本証券業協会(JSDA)も、投資家向けに注意喚起資料を発表しました。特に、証券口座のセキュリティを高めるために「多要素認証の必須設定」など、利用者保護策を推進しています。
▼ 日本証券業協会(JSDA)からの注意喚起
ネット証券各社の対策
ネット証券各社も、セキュリティ対策を強化しています。ログイン時には、二段階認証(ワンタイムパスワードなど)を原則必須とし、さらに端末認証や異常ログイン検知機能の導入を進めています。
特に二段階認証の強制適用は、今後すべての証券会社で標準化が進む見込みです。これにより、攻撃者による不正ログインリスクを大幅に低減できると期待されています。
個人でできる防止策
証券口座を不正アクセスから守るためには、個人でも日常的な対策を徹底することが欠かせません。ここでは、具体的な防止策を紹介します。
パスワードを強化する
まず基本となるのは、パスワードを強化することです。できるだけ長く複雑なパスワードを設定し、他のサイトとの使い回しは避けましょう。一つのパスワードが漏れるだけで、複数のサービスが連鎖的に乗っ取られるリスクがあります。
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二段階認証を必ず設定する
ログイン時に手間が発生しますが、証券会社が提供する二段階認証は必ず有効化しましょう。ログイン時にID・パスワードだけでなく、SMS認証コードやワンタイムパスワードを入力することで、第三者による不正アクセスを強力に防止できます。
「こんなことで・・・」って思う方もいるかもしれませんが、とても有効な手段です。このひと手間で自身の資産を守ることができます。
メールやSMSのリンクを不用意に開かない
フィッシング詐欺対策も重要です。証券会社を装った偽メールや偽SMSのリンクを開かないよう注意しましょう。アクセスする場合は、公式アプリや自分でブックマークした正規サイトから直接アクセスするようにしてください。
▼ フィッシング詐欺についてはこちらから🔗

ウイルス対策ソフトを導入・常に最新化する
PCやスマートフォンにも、信頼できるウイルス対策ソフトをインストールしておきましょう。あわせて、OSやアプリも常に最新のバージョンにアップデートし、マルウェア感染リスクを最小限に抑えることが大切です。
▼ マルウェアについてはこちらから🔗

取引後は必ずログアウトする
ログイン状態を放置すると、不正アクセスのリスクが高まります。取引が終わったら必ずログアウトする習慣をつけ、セッション情報を守りましょう。
取引履歴やログイン履歴を定期的にチェックする
最後に、こまめに取引履歴やログイン履歴を確認することも重要です。不審な取引や身に覚えのないアクセス履歴を見つけた場合は、速やかに証券会社に連絡し、必要な対応を依頼しましょう。
まとめ:自分の資産を守るために
ネット証券の利便性は年々高まっていますが、それに比例してリスクも増しています。証券口座乗っ取りは、誰にでも起こり得る脅威です。
「自分は大丈夫」と思わず、できる対策を今日から始めましょう。自分の資産を守るために、正しい知識と対策でしっかり備えてください。
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