
近年、ビッグデータやAI、UXといった分野の技術革新が進み、企業や行政の現場ではそれらを活用できる人材の需要が急増しています。こうした社会の変化に対応するため、情報処理技術者試験では2027年度より「データマネジメント」および「デザインマネジメント」の2つの新区分が新設される見込みです。本記事では、新区分の概要や背景、問われるスキル、今後のスケジュールについて詳しく解説します。
デジタル時代のニーズに応える新試験区分
2025年5月、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は、国家資格「情報処理技術者試験」において、データマネジメントおよびデザインマネジメントといった新たな試験区分の新設を予定していることが報道されました。これらの新区分は、2027年度からの本格導入が見込まれています。
背景にあるのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を担う人材の育成と評価の枠組みの再構築です。AIやビッグデータ、UX重視の開発が急速に進む中、企業や自治体ではこれらを牽引する高度な実務能力を持つ人材の需要が拡大しています。IPAや経産省は、これに対応するため、情報処理技術者試験の大規模な見直しを進めています。
▼ 情報セキュリティマネジメント資格も国家資格のひとつです

新区分①:データマネジメント区分とは?
データマネジメント区分では、組織全体のデータを適切に管理し、価値ある情報として活用できる体制づくりを担う人材を対象とします。
IPAの「デジタルスキル標準」では、「データを収集・解析・運用する仕組みの設計・実装・維持」がこのスキルセットに含まれており、より戦略的で組織横断的な役割が求められます。現時点で想定されるスキル内容は以下の通りです。
従来の「データベーススペシャリスト」区分と比較して、経営層との連携や施策立案までを視野に入れた能力が重視される点が特徴です。
新区分②:デザインマネジメント区分とは?
デザインマネジメント区分は、プロダクトやサービスにおいてユーザー視点を重視した設計・価値創出を担う人材を対象とします。
IPAはこのスキルセットを「顧客・ユーザーの視点をとらえた体験設計と、それを開発・組織に落とし込む力」と定義しており、現場での実践力が問われる区分です。盛り込まれる内容は以下のようなものが想定されます。
この分野は従来の情報処理試験では評価されてこなかった領域であり、今回の新設は国家試験として初の試みとなります。
背景:デジタル人材の多様化と国家資格の役割
経産省によれば、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、特に「データ活用」や「UX設計」分野の人材需要が高まっています。

IPAが策定した「デジタルスキル標準」でも、以下のような人材像が定義されています。
こうした人材を国家資格という枠組みで評価・育成することで、企業や教育現場にとっての指標が明確になり、社会全体のデジタルリテラシー向上にもつながると期待されています。
実施スケジュール
現時点では、詳細な試験要項は発表されていませんが、下記のスケジュールが想定されています。
年度 | 内容 |
---|---|
2025年度 | 新設案の公表・パブリックコメント実施 |
2026年度 | 試行問題の公開・教育機関対応 |
2027年度 | 本格導入予定(春 or 秋試験) |
過去の試験制度改定と同様、事前に模擬問題や公式テキストの配布が行われる可能性が高く、受験対策は早めに動くことが望まれます。
現場からの声と今後の展望
SNSや技術系フォーラムでは、今回の新区分新設に対して歓迎の声が上がっています。
- 「ようやくデータ管理にも国家資格ができる」
- 「デザイン分野の試験導入は画期的」
一方で、「難易度や受験対象が気になる」「既存区分との重複は?」といった疑問も多く、今後のIPAや経産省の発表が注目されています。
教育業界や教材出版社も対応準備を始めており、専門講座の立ち上げや参考書の制作が今後本格化することが予想されます。
まとめ:DX人材認定制度の転換点に
新たな試験区分の導入は、従来の「ITシステム開発者」向けではなく、データ活用や顧客体験設計に携わる専門人材向けの国家資格として、社会的意義の大きい取り組みとなります。
正式な出題範囲や受験要件の詳細は今後発表予定ですが、関係者は早めに情報を収集し、変化に備えることが求められるでしょう。
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