
応用情報技術者試験や高度試験、そして情報処理安全確保支援士試験は、IT人材育成を支える国家資格として長年にわたり実施されてきました。従来は春と秋に全国一斉で紙試験が行われていましたが、2026年度からは新たにCBT(Computer Based Testing)方式が導入されます。これにより、受験日程の柔軟化や試験方法の効率化が進み、受験者にとって大きな転換点となります。
本記事では、このCBT方式の導入背景や従来方式との比較、メリット・デメリット、さらには具体的な受験対策までを整理し、今後の受験に備えるための情報を提供します。
そもそもCBT方式とは?新制度について
CBT方式とは、試験会場に設置されたコンピュータを用いて受験する方式です。応用情報技術者試験や高度試験、情報処理安全確保支援士試験では、これまで紙に記述する形式で実施されてきましたが、今後は画面表示の問題にマウスやキーボードで解答する形に変わります。
受験者は半期ごとに設定される複数日程から試験日を選択でき、利便性が大きく向上します。これにより従来の「年2回一斉実施」という制約がなくなり、受験チャンスが広がる点が特徴です。また、解答データの自動集計や採点効率化により、公平性と迅速な結果通知も期待されています。
ただし、PC試験特有の操作や環境に慣れる必要があるため、従来とは異なる準備も求められます。CBT方式導入は、試験制度の近代化と受験者利便性向上を同時に実現する大きな改革と言えるでしょう。
CBT方式導入の背景
CBT方式導入には、複数の社会的背景や技術的要請があります。ここでは、なぜ国家試験においてもデジタル化が進められるのかを整理します。
DX人材需要の拡大
近年、企業や行政においてデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速しており、クラウドサービスやAI、セキュリティ技術など多岐にわたる分野で高度なITスキルを持つ人材が必要とされています。こうした動きを背景に、情報処理技術者試験の応募者数は年々増加し、制度開始以来初めて70万人を突破しました。

特に応用情報技術者試験や高度試験は、ITエンジニアがキャリアアップを図る上で重要な位置付けを持つことから、受験希望者が急増しています。しかし、従来の年2回一斉実施という方式では、増加するニーズに十分に応えられず、柔軟な受験機会を提供する仕組みが求められていました。
そこで、受験者が自分の都合に合わせて日程や会場を選べるCBT方式が導入されることになったのです。これは単なる試験方式の変更にとどまらず、社会全体でDXを推進するための人材育成基盤の強化策と位置付けられています。
コロナ禍を契機とした改革
もう一つの大きな要因は、新型コロナウイルス感染症の影響です。2020年当時、数千人規模の受験者を会場に集めて行う試験は、感染拡大リスクや中止の可能性を常に抱えていました。実際、一部の試験が延期や中止となり、多くの受験者が受験機会を失いました。この経験から、従来方式のままでは不測の事態に柔軟に対応できないことが明らかになったのです。
CBT方式であれば、試験日程を複数日に分散できるため、特定日程の中止リスクを低減できます。また、少人数での受験環境を整えやすく、受験者の安全確保にもつながります。さらに、災害やシステム障害が発生した場合にも、別日程への振替がしやすいという強みがあります。
こうした点からも、CBT方式は試験制度を持続可能にするための不可欠な改革と位置づけられています。
これまでの試験方法との比較
従来の紙試験とCBT方式の違いを理解することは、受験準備を進める上で欠かせません。両者は日程、会場、解答方法などで大きな違いがあります。従来方式では、春期と秋期の年2回、同一日に全国一斉で試験が行われました。受験者はマークシートや解答用紙に手書きで記入し、結果発表までは約7週間かかるのが一般的でした。
一方、CBT方式では半期ごとに複数日程が設定され、受験者は希望する日時と会場を予約して受験します。答案はすべてデータ化され、自動集計が可能なため採点の効率化も期待されます。
項目 | 従来の紙試験 | CBT方式 |
---|---|---|
試験日程 | 春期・秋期の年2回 | 半期ごとに複数日程から選択可能 |
会場 | 大学・ホールなどの大規模会場 | 全国のテストセンター |
解答方法 | マークシートと手書き論述 | 画面操作とキーボード入力 |
結果発表 | 約7週間後に公表 | 一部試験は当日スコア表示、合否は後日 |
このように、CBT方式は利便性を高めつつも、試験制度の公平性を維持する工夫が組み込まれています。受験者は新しい形式に合わせた準備が必要です。
CBT方式によるメリット・デメリット
CBT方式には利点と課題の両方があります。特に受験者側にとっては利便性が高まる一方で、従来にはなかった新しい不便さも生まれます。ここでは受験者視点から整理し、メリットとデメリットを対比してみましょう。
受験者にとってのメリット
CBT方式は受験者にとって大きな環境改善をもたらします。試験日程や会場の柔軟性が増すだけでなく、論述の入力方法が変わることで解答のしやすさも向上します。主なメリットは以下の通りです。
これらの要素は、従来の「年2回同一日・同一会場」という制約を大きく緩和し、受験チャンスを広げる効果につながります。忙しい社会人や学生にとっては特に恩恵が大きいでしょう。
受験者にとってのデメリット
一方で、CBT方式には注意すべき課題も存在します。PC試験という特性上、従来の紙試験で慣れていた解答環境とは異なる制約が生じます。代表的なデメリットは次の通りです。
このように、便利になる一方で新しい負担も生まれるため、事前の準備や試験戦略が欠かせません。特に地方受験者や論述問題を得意とする人は、環境変化への適応が求められます。
まとめ
CBT方式の導入は、応用情報技術者試験や高度試験、情報処理安全確保支援士試験にとって大きな制度改革です。受験機会の拡大や利便性向上といったメリットがある一方、PC試験特有の課題も存在します。
受験者は従来の学習法を継続しつつ、新しい試験環境に適応する準備をすることで、安心して本番に臨めるでしょう。CBT化は、今後のIT人材育成において重要な一歩となるはずです。
コメント