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サイバーセキュリティ

ファイルレスマルウェアとは?仕組み・手口・対策をわかりやすく解説

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「怪しいファイルが見つからないのに、端末の動きが不自然」──そんなときに疑われるのがファイルレスマルウェアです。結論はシンプルで、守り方は“ファイル探し”よりも正規機能の悪用をログと挙動で捉えて止める方向に寄せることが重要です。

ここでは、ファイルレスマルウェアについて、仕組み・手口・対策を解説します。


ファイルレスマルウェアとは

ここでは「何がファイルレスなのか」を、誤解しやすい点も含めて整理します。用語の定義を押さえると、対策の優先順位を付けやすくなります。

ファイルを置かずにメモリや正規機能で動く

ファイルレスマルウェアは、実行ファイルを端末に保存せず、メモリ上に展開して動いたり、OSに元からある管理機能を“実行の器”として悪用したりする攻撃の呼び方です。

見た目は管理作業に近いのに目的は不正、というズレが起きます。さらに処理が短時間で終わると、後から端末を見ても「何が起きたか」が追いにくくなります。だから「ウイルス検知が出ない=安全」とは限らず、実行の連鎖(誰が何を起動したか)で判断します。

たとえるなら、道具は台所の包丁でも、使い方が犯罪なら危険という話です。重要なのは“道具の有無”ではなく“使われ方”です。

実務では、まず“怪しいファイル”ではなく“怪しい実行”を疑うと判断がぶれません。

「ファイル0」ではなく痕跡の残り方が違う

完全に何も残らないとは限りません。再起動後も動かすために設定を変えたり、自動実行の仕掛けを入れたりすると、ファイルではなく別の場所に足跡が残ります。

重要なのは“どこを見ればよいか”です。たとえば設定変更、実行履歴、アカウントの利用履歴などを追えると、原因特定と再発防止が一気に楽になります。端末の掃除より、仕掛けが残っていないかを確認するほうが効きます。

見落としやすいのは「一度直ったように見えるが、裏で自動実行が残っている」ケースです。復旧後に“同じ設定が戻っていないか”まで確認すると、再発が減ります。

復旧後チェックを手順化しておくと、担当が変わっても抜け漏れが減ります。


なぜ検知されにくいのか

ファイルレスが厄介なのは、普段の業務操作と似た痕跡になりやすい点です。検知が難しい理由を知ると、どこに手を入れるべきかが見えてきます。

正規ツールに紛れる(いわゆる“備え付けの道具”悪用)

攻撃者は、端末に最初からある機能やツールを使って操作を進めることがあります。これが「正規の作業」と見分けにくい原因です。

単体では白黒つかない動きでも、文脈を足すと“不自然さ”が見えてきます。たとえば「普段その担当が使わない端末で、深夜に管理系の操作が続く」「短時間に似た命令が何度も繰り返される」などは典型です。

そこで、誰が・いつ・どの端末で・何の目的で使うかを決め、外れ値を検知する設計が重要になります。禁止よりも、使う前提で統制する発想が現実的です。通常業務の“型”を作るほど、逸脱が見つけやすくなります。

さらに、管理作業の申請やチケットとログをひも付けられると、正当な作業の裏付けが取りやすくなります。

メモリ上で短時間に実行され後追いが難しい

メモリ上で実行してすぐ終わると、端末を後から調べても“現物”が見つからないことがあります。そこで大事になるのが、実行時点の記録です。

プロセスの起動履歴、認証の成否、外部通信のログがそろうほど、原因を線で追いやすくなります。逆にログが短期で消える運用だと、空白の時間帯が生まれます。時刻同期や集中保管まで含めて整えると、対応が速くなり「推測で復旧する」リスクも下がります。

ログの保存期間と検索性は、実務では“検知精度”と同じくらい重要です。加えて、重要端末だけでも詳細ログを厚めに取ると、全体を変えずに効果を出しやすいです。

ログが足りない環境では、まず“何が起動したか”だけでも残すと一歩前に進めます。

「禁止しすぎ」で例外が増えると穴が残る

分かりやすく禁止すると安心に見えますが、業務に必要な機能まで止めると例外が増え、管理不能になりがちです。例外が増えるほど、攻撃者が紛れ込む余地も増えます。おすすめは「使う前提で統制する」考え方です。

  • 実行できる人・端末・時間帯を絞る
  • 実行内容をログで追えるようにする
  • 重大な挙動は自動で隔離できるようにする

こうして“許可の条件”を明確にすると、例外が増えても管理しやすくなります。禁止か許可かの二択ではなく、条件付きで許可するのがコツです。条件が明確なら、監査や振り返りで「なぜ許可したか」を説明でき、運用が継続します。


代表的な手口の流れ(侵入→実行→居座り)

入口だけ守っても、侵入後に静かに操作されると被害が広がります。全体の流れをつかむと、どのログや対策が効くかを判断しやすくなります。

初期侵入はメールや脆弱性など別経路になりやすい

ファイルレスは入口というより「侵入後の動き方」として使われることが多いです。入口は一つに絞れません。だから、入口対策と同時に侵入後の検知も用意します。よくある入口は次の通りです。

  • フィッシングで認証情報を盗む
  • ソフトの弱点を突いて侵入する
  • 使い回しパスワードを悪用する

入口は多様でも、侵入後の目的は似通います。後半の挙動を止められる設計があると、どこかでブレーキがかかります。逆に入口だけに頼ると「入られた時点で詰む」状態になりやすいです。だからこそ、メール対策や更新の徹底に加え、侵入後の異常検知を同じ重みで扱います。

実行はスクリプトや管理機能で進む

侵入後は、端末にある機能を使って命令を実行します。見た目が通常作業に近いので、“何が起点で、何が続いたか”という連鎖で判断します。次のような連鎖が重なるほど要注意です。

  • Officeやブラウザの直後にスクリプト実行が走る
  • 意味が読めない長い命令や難読化が見える
  • 実行直後に外部通信や別プロセス起動が続く

単発ではなく、親子関係と時間の流れで見ると確度が上がります。端末ログと通信ログを突き合わせると、管理作業との区別もしやすくなります。現場では「いつもの運用手順に当てはまるか」を一度確認するだけでも誤検知が減ります。

居座りはタスクや設定の自動実行に紛れ込む

再起動しても戻ってくるように、設定に仕掛けを入れることがあります。ファイルがなくても、タスクや自動起動に混ざると発見が遅れます。点検のコツは「増えたもの」を差分で見ることです。

  • いつ作られたか分からないタスク
  • 説明のない自動起動設定
  • 管理者以外が作った自動実行

平時から棚卸しの仕組みを作ると、侵害の早期発見にもつながります。復旧後の再侵入確認にも使えます。逆に、変更履歴が残っていないと「誰がいつ入れた仕掛けか」が分からず、同じ条件で再発しやすくなります。タスク名や説明を“それっぽく”偽装されることもあるため、名前だけで判断せず作成者や作成時刻も確認します。


被害として起きやすいこと

ファイルレスは“気づきにくさ”が被害を大きくします。起きやすい被害を先に知っておくと、守るべき対象が明確になります。

認証情報の窃取とアカウント乗っ取り

侵入後の狙いとして多いのが、ID・パスワードやセッション情報の窃取です。これが取られると、端末を初期化しても別経路で再侵入される恐れがあります。

兆候としては、深夜や休日の不審ログイン、失敗が続いた直後の成功、端末や場所が急に変わるといった変化が目立ちます。対策は、多要素認証の徹底と、認証ログを追える体制です。特権IDは分離し、利用を最小化すると被害が広がりにくくなります。

加えて、重要操作は“追加確認”を入れると、奪われたIDだけで完走しにくくなります。怪しい兆候が出たら、端末対応と同時に認証情報の見直し(変更・無効化)までを一気に進めるのがポイントです。

横展開→情報漏えい→業務停止へ連鎖

侵入後に社内を横移動されると、被害範囲が急に広がります。最終的な目的は様々ですが、情報持ち出しや業務停止につながり得ます。

典型例としては、共有フォルダやサーバの探索→権限奪取→重要領域への到達→外部送信や破壊、という流れです。横展開を止めるには、権限分離とネットワーク分離が効きます。バックアップも分離保管にすると、最悪時の復旧力が上がります。

守るべき“重要資産の置き場”を決め、そこへ直通できない構造にすると強くなります。端末同士が自由に通信できる構造は横展開を助けるので、必要最小限の通信に絞るだけでも効果があります。


対策(個人・企業で優先順位を分ける)

「全部やる」より、効果が高い順に積み上げるほうが成功しやすいです。個人と企業で守る範囲が違うので、優先順位も分けて考えます。

個人:入口対策を固める(更新・多要素認証・怪しい誘導を断つ)

個人では、入口を減らす対策が最も効きます。まず更新を切らさず、重要アカウントは多要素認証を入れます。さらに“急かす案内”に反応しないことが大切です。

  • OSとブラウザを自動更新にする
  • 主要アカウントに多要素認証を設定する
  • パスワードの使い回しをやめる

迷ったら、リンクを踏まずに公式サイトから手続きするのが安全です。突然の警告で焦らせる手口は多いので、まず画面を閉じて落ち着くのが最強の防御になります。加えて、不要な拡張機能やアプリを減らすと“入口”そのものが減ります。パスワード管理ツールを使って長く複雑なパスワードに統一すると、使い回しも減らしやすいです。

企業:権限を絞りスクリプト実行を統制する

企業は、特権の整理が最優先です。不要な管理者権限や共有IDが残ると、侵入後の探索が一気に進みます。次に、スクリプトやマクロの利用範囲を決め、例外も含めて管理します。

  • 管理者権限の棚卸しと最小化
  • 管理作業用端末の分離(可能なら)
  • マクロやスクリプトの利用ルール化

利便性と安全性のバランスを取りつつ、例外を“見える化”して運用すると穴が減ります。構成変更を記録し、差分を追える状態にしておくと調査も速くなります。組織が大きいほど「ルールの周知」と「例外の承認フロー」までセットにすると崩れにくいです。加えて、重要システムは“誰でも触れる状態”を避け、担当・端末・経路を限定するのが基本です。

EDR運用:導入より「検知→隔離→復旧」の設計が肝

EDRは端末の挙動を見て、封じ込めまで支援する仕組みです。ただし導入だけでは効果が出ません。重大度の基準、一次切り分け、隔離手順、証跡保全、復旧判断までを手順化します。

  • 重大アラートは自動隔離の条件を決める
  • 証跡を確保してから復旧作業に入る
  • 対応後に検知ルールを改善する

メリットは早期検知、デメリットは運用負荷です。アラートの“見疲れ”を防ぐため、優先度設計とチューニングを継続することが重要です。最初は重要端末から段階導入し、回る運用にしてから範囲を広げると失敗しにくいです。加えて、夜間・休日の当番や外部委託の切り分けなど、運用体制も合わせて決めると実効性が上がります。


検知・調査のポイント(ログで勝つ)

ファイルレスは“見えにくい”分、ログの設計が勝負になります。ここでは効果が出やすい見方を、実務目線でまとめます。

実行ログ:プロセスの起動履歴を残す

重要なのは「何が、何を起動したか」です。親子プロセスが追えると、通常業務から外れた連鎖を見つけやすくなります。確認したい観点は次の通りです。

  • Office/ブラウザ起点の不自然な実行
  • 管理系コマンドの連続実行
  • 実行直後の外部通信や権限操作

ログは端末内だけに残すと消えやすいので、集中保管して検索できる形が理想です。時刻同期も含めて整えると、相関分析がやりやすくなります。ログは「取る」より「使える形で残す」がポイントです。

たとえば“いつ・誰が・どこで”の条件で素早く絞り込めると、初動の迷いが減ります。加えて、通常業務の“よくある連鎖”を把握しておくと、異常の判定が速くなります。

相関分析:端末ログと通信ログをつないで見る

端末だけを見ると“正規ツールの利用”に見えても、通信を合わせると不審さが浮きます。たとえば、実行直後に未知の宛先へ通信が増える、DNS問い合わせが急増するなどは要注意です。

  • 端末の実行履歴(いつ・誰が・何を)
  • プロキシやDNSの履歴(どこへ出たか)
  • 認証ログ(いつ・どこから入ったか)

点ではなく線で見ると、攻撃の筋道が見えてきます。日常の正常パターンを作っておくと、異常の発見が早くなります。検知の精度は、ログの粒度と保存期間に大きく左右されます。

相関分析の結果は、重大度に応じて「自動隔離」「要確認」など処理を分けると、運用が回りやすくなります。


よくある質問(FAQ)

最後に、現場でよく出る疑問に短く答えます。ここを押さえると、対策の迷いが減ります。

ウイルス対策ソフトだけで大丈夫?

完全に不十分とは言いませんが、ファイルレスは“ファイルの現物”が少ないため見落としが起きやすいです。

おすすめは組み合わせです。更新・多要素認証で入口を狭め、端末の挙動監視とログで侵入後を捉えます。検知後は隔離、認証情報のリセット、影響範囲確認までをセットにすると再発が減ります。

一方で製品を増やすほど運用負荷も増えるので、まず「ログが追えるか」「隔離できるか」「復旧手順があるか」を点検するのが近道です。費用をかける前に“今のログで追えるか”を確認すると、投資の優先順位が決めやすくなります。

個人でも企業でも、最終的には「異常に気づける仕組み」を持つことが大切です。

PowerShellを無効化すれば安全?

一律無効化は業務影響が出やすく現実的でないことが多いです。

メリットは攻撃面の縮小ですが、デメリットは例外乱立と管理不能です。現実解は、利用範囲を定義して統制することです。実行できる人や端末を絞り、実行内容をログで追えるようにし、怪しい連鎖は隔離できるようにします。

いきなり全面禁止ではなく、段階的に制限を強めると現場に定着しやすく、例外管理も破綻しにくくなります。代替として「管理端末だけ許可」「決めたスクリプトだけ許可」のように、用途を限定していくのが安全です。

可能なら“許可したスクリプトだけ動く”状態を目指すと、攻撃者の自由度を大きく下げられます。

まず何から手を付けるべき?

優先度は「入口の強化」と「追えるログ」です。

多要素認証、更新の維持、特権IDの整理で被害を小さくできます。次に、実行ログ・通信ログ・認証ログを必要期間保存し、検索できる形にします。

並行して、隔離手順と証跡保全の手順を決め、机上訓練でもよいので一度回すと実戦で迷いません。「見える化→優先度付け→運用」の順で進めると頓挫しにくいです。

最初にログの棚卸し表を作ると、投資判断もスムーズになります。さらに“誰が判断し、誰が作業するか”の役割分担を決めておくと、初動の遅れを防げます。最後に、緊急連絡先と報告ルートを決めておくと、深夜対応でも混乱しにくいです。


まとめ

ファイルレスは「ファイルがない」こと自体が問題なのではなく、「正規機能に見える不正」を見落としやすい点が本質です。最後に要点だけまとめます。

– 入口は多様なので、侵入後の挙動検知(実行の連鎖)を重視する

– 対策の軸は、権限最小化・実行統制・ログ設計(保存と検索)

– EDRは導入よりも、隔離・証跡・復旧までの運用設計が重要

この3つを土台にすると、流行の手口が変わっても耐性が残ります。

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