2025年10月14日、MicrosoftによるWindows 10の延長サポートが正式に終了します。これは「EOL(End of Life)」と呼ばれ、以降はセキュリティ更新や技術サポートが一切提供されなくなることを意味します。現在も多くのユーザーがWindows 10を使用していますが、「とりあえず放置しておこう」と考えている方も少なくありません。
しかし、サポート終了後もWindows 10をそのまま使い続けることには、深刻なリスクや不都合が数多く存在します。本記事では、Windows 10を放置した場合に起こり得る6つの主な問題と、その対策をわかりやすく解説します。
Windows 10を放置すると起こる6つのリスク
Windows 10のEOL後にそのまま使い続けた場合、ユーザーはどのような問題に直面するのでしょうか。ここでは代表的な6つのリスクを挙げ、それぞれの内容について具体的に解説していきます。
特にセキュリティ面だけでなく、ソフトや周辺機器、サポート体制、法的リスク、そして最終的なコスト面に至るまで、多角的な影響があることを理解しておきましょう。
1. セキュリティリスクが急激に高まる
サポート終了後、MicrosoftはWindows 10に対してセキュリティ更新プログラムを提供しなくなります。つまり、新たな脆弱性が発見されても修正されず放置される状態になるのです。この状態が長く続けば、PCはサイバー攻撃者にとって“格好の標的”となります。
▷ ランサムウェアやウイルスの標的に
過去のWindows XPや7でも、サポート終了直後にウイルス感染や不正アクセスの被害が急増しました。Windows 10も例外ではなく、ランサムウェアによるファイル暗号化や情報漏えいの被害が懸念されます。特に個人情報や業務データが保管されている場合、取り返しのつかない損失につながる可能性があります。
また、近年は「ゼロデイ攻撃」など、公開前の脆弱性を突いた手口も増えており、常に更新されたOSでなければ対応が困難です。Windows 10の放置は、それら攻撃に対して無防備な状態を放置することを意味します。
▷ セキュリティソフトでも限界あり
多くのウイルス対策ソフトは、新OS向けに機能強化されています。サポートが切れたWindows 10では最新機能が使えず、防御力が大きく低下する恐れがあります。さらに、OS自体にセキュリティの穴があれば、セキュリティソフトだけでの防御には限界があるため注意が必要です。
2. ソフトや周辺機器が使えなくなる
サポート終了は、OSだけでなくソフトウェアやハードウェアにも影響を及ぼします。特に日常的に使用するアプリケーションや外部機器との互換性が徐々に失われていき、利便性が著しく低下します。
▷ 最新アプリがインストールできない
アプリ開発企業は順次、Windows 10のサポートを打ち切っていくと予想されます。たとえば、ウェブブラウザやクラウドサービス、動画編集ソフトなどの新機能が使えなくなる可能性があります。古いバージョンでは動作不良やセキュリティリスクも高まるため、安心して利用することが難しくなるでしょう。
さらに、各種ネットサービス(ネットバンキング、証券口座、確定申告ソフトなど)も対応OSをWindows 11以降に限定してくるケースが増えており、社会的にも旧OSユーザーが排除されていく流れが強まっています。
▷ プリンターやカメラが動作しない
周辺機器のドライバーも、今後はWindows 11以降を前提に設計されます。古いOSではドライバーが提供されず接続できないトラブルが多発するでしょう。これにより、印刷ができなくなったり、カメラが認識されなかったりと、仕事や生活に支障が出るケースも少なくありません。特にテレワークやオンライン会議を行う機会がある方には深刻な影響となります。
3. Microsoftやメーカーからのサポート対象外に
Windows 10に何らかの不具合が起きても、2025年10月以降はMicrosoftに問い合わせてもサポートは一切受けられません。これは「公式に見放された状態」と言っても過言ではなく、全ての対応が自己責任となります。
▷ 修理・交換の断られるリスク
PCメーカーやプリンターメーカーでも、「対応OS外」の製品は原則として保証対象外です。OS起因の不具合は対応されず、「まずWindows 11にアップグレードしてください」と言われることが増えるでしょう。特に法人利用では、サポートを受けられないことが業務上のリスクとなります。
また、家電量販店のサポート窓口でも「サポート対象外のOSでの問題は受付できません」と明言される場合があり、実質的に「助けを求められない環境」に陥ることになります。
4. 法的リスクや契約上の不利益も
企業や副業利用者の場合、Windows 10を放置することは法令違反や保険契約違反に該当する可能性もあります。安全性の低い環境で個人情報を取り扱うことは、重大な管理責任を問われる事態にもつながりかねません。
▷ 個人情報保護法との関係
日本の個人情報保護法では、安全管理措置が求められています。サポート切れのWindows 10は「安全とは言えない状態」であり、万一漏えいが起きれば管理者責任を問われる可能性があります。これは中小企業や個人事業主にとっても無視できないリスクです。
特にBtoB取引においては、「情報管理体制が不十分な会社とは取引できない」と判断されるケースもあり、Windows 10のまま放置することは信用面でも不利に働く恐れがあります。
▷ サイバー保険の適用外
サポート終了後に起きたセキュリティ事故について、保険会社が補償を拒否するケースもあるため注意が必要です。保険約款の中には「ベンダーサポートが継続している環境であること」が条件となっているものもあり、旧OSの使用は契約違反となる恐れもあります。
さらに、サイバーリスク保険の更新時に「現在のOSがサポート対象かどうか」を審査されることも増えており、移行しないままだと継続契約ができない可能性もあります。
5. 結果的に高くつく!長期的コストの増加
「今すぐお金をかけたくないから」と放置するのは危険です。むしろアップグレードしないことで後からより大きな出費が発生する可能性があります。
▷ ランサムウェア被害時の費用
感染してしまった場合、データ復旧費用や業者対応、謝罪・調査・再発防止策の構築など、数十万円〜数百万円規模のコストがかかることもあります。業務停止や顧客離れが発生すれば、直接的な金銭損失以上の影響を受けるかもしれません。
▷ 延長サポートは有償
Microsoftは一部ユーザー向けに有償の延長セキュリティ更新(ESU)を提供予定ですが、年額4,000円以上、しかも段階的に値上げされていくとされています。これを数年支払い続けるよりは、新しいPCに投資するほうが合理的とも言えるでしょう。
法人ユーザー向けのESUは1年目から1台あたり61ドル、2年目以降はさらに高額となる予定であり、100台単位で運用している企業では無視できない費用負担になります。
6. アップグレードできない可能性もある
Windows 11には厳格な動作要件が設定されており、全てのWindows 10 PCがそのまま移行できるわけではありません。特に2017年以前に製造されたPCでは、要件を満たさないケースが多いです。
▷ TPM 2.0やセキュアブートが必要
古いPCには必要なセキュリティチップ(TPM)が搭載されていないケースが多く、その場合はWindows 11へのアップグレードが不可となります。無理にインストールしても不安定動作やサポート対象外の警告が出るなど、安定した利用が困難になります。
▷ 買い替えを余儀なくされるケースも
対応しないPCの場合、新しいPCを購入する以外に選択肢がないというケースも増えています。とはいえ、今なら旧PCの下取りなどでお得に買い替えるキャンペーンも実施されています。長期的には、投資効果の高い選択と言えるでしょう。
対策:今からできる3つのアクション
これまでのリスクを踏まえたうえで、Windows 10のEOLに向けてどのような対応を取ればよいのでしょうか。
この章では、一般ユーザーでも無理なく取り組める3つの現実的なアクションを紹介します。Windows 11への移行準備や、非対応端末への対応策など、状況に応じた判断と行動が求められます。
1. 自分のPCがWindows 11に対応しているか確認する
まずは、Microsoftが提供している「PC正常性チェック」アプリを使って、現在のPCがWindows 11の要件を満たしているか確認しましょう。このアプリは、TPM(セキュリティチップ)の有無、CPUの世代、ストレージ容量、セキュアブート対応の有無などを一括でチェックしてくれる便利なツールです。
加えて、Windowsの設定画面や「Windows Update」からも、アップグレードの対象かどうかが通知される場合があります。表示されない場合は、手動でダウンロードして確認する方法もあるため、Microsoft公式サイトもチェックしておくと安心です。
なお、企業などで複数台のPCを管理している場合には、Microsoftの「Endpoint Analytics」や「Intune」などを活用して一括診断を行う方法もあります。こうしたツールを使うことで、組織全体の移行準備状況を可視化しやすくなります。
2. 対応していれば早めにアップグレード
Windows 10から11へのアップグレードは、通常は無料で提供されています。ライセンスを再購入する必要はありませんが、ハードウェアが要件を満たしている必要があります。TPM 2.0対応やUEFIブートなど、要件を満たさない場合はアップグレードできませんので、前述の方法で確認を済ませてから進めましょう。
また、移行は余裕のあるタイミングで行うことをおすすめします。ギリギリでアップグレードを試みると、回線混雑や更新トラブルなど、予期せぬ事態に見舞われる可能性があります。移行後はセキュリティ機能が強化されたほか、新しいデザインやウィジェット機能、スナップレイアウト機能などが搭載されており、より快適な操作環境を実感できるでしょう。
移行作業に不安がある方は、パソコンショップの有償サポートを活用するのも手です。最近では、自治体や公共施設などで無料のデジタル講座を開催しているケースもあり、そういった場でアドバイスを受けながらアップグレード作業を進める人も増えています。
3. PCが非対応なら買い替えを検討
残念ながら、お使いのPCがWindows 11の要件を満たしていない場合は、買い替えを検討することが現実的です。特に5年以上前のPCではTPM 2.0が搭載されていないことが多く、ソフトウェアだけでの対応は難しいのが現状です。
新しいPCを導入することで、省エネ性能の向上、静音化、高速な起動時間、大容量ストレージなど、日常的な使いやすさも大きく向上します。また、初期費用を抑えたい方には、リファービッシュ(整備済み)モデルや型落ちモデル、中古PCの選択肢もあります。
さらに、家電量販店やオンラインショップでは、下取りキャンペーンやポイント還元キャンペーンを活用することで、コストを大幅に削減することも可能です。自治体や教育機関によっては、学生や高齢者に対する助成制度を設けているケースもあるので、最新情報を確認してみるとよいでしょう。
まとめ:放置は危険。行動は「今」がベスト
Windows 10のサポート終了は、単なるバージョンの切替ではありません。放置すれば深刻なセキュリティリスクにさらされ、思わぬ不具合や費用が発生する可能性があります。しかも、それはいつ起きても不思議ではありません。
「まだ使えるから」「まだ動いているから」と後回しにせず、今このタイミングで対策を講じることが、結果的に安全で経済的な選択になります。自分のPCを守るためにも、ぜひ早めの移行を検討してみてください。
EOLのタイミングを「行動のきっかけ」と捉え、安心してデジタルライフを送れる環境を整えていきましょう。将来のトラブルを未然に防ぎ、安全・快適なPCライフを維持するために、今日から準備を始めましょう。
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